土佐漆喰

土佐漆喰は、江戸時代に台風や雨が多い高知で産まれた地域独自の漆喰です。

(図:土佐漆喰の材料と製造過程)

●土佐漆喰は「消石灰(しょうせっかい)」と「稲ワラ(発酵ワラスサ)」を混ぜて造ります。
一般的な漆喰は亀裂防止の為、麻スサの原料であるドンゴロスを配合し、銀杏草(ぎんなんそう)などの海藻類(海藻ノリや植物のり)を水に混ぜたものをノリとして使用します。それらを消石灰(漆喰の主成分)と混ぜて漆喰としますが、乾燥による収縮や水に弱いといった難点があります。
一方、土佐漆喰では、亀裂防止のスサには手で刈った稲ワラを発酵させ、発酵時に分泌される糖質(リグニン)がノリの代わりを果たします。土佐漆喰は、ノリを添加しないことにより乾燥時の収縮や雨水への耐性が極めて強い事が特徴です。

(写真:加工前の稲ワラ、田中石灰工業株式会社ニテ)

 亀裂防止のスサには手で刈った稲わらを使います。一本一本藁を確認し大きな節をカットし、ローラーで節を潰す事で使える稲ワラに仕上げていきます。
 次に、代々使われている釜(菌が常駐)に水を混ぜたワラを投入し、シートの下で2ヶ月ほど発酵させます。発酵時には納豆菌が活躍しワラが40度位まで熱を持ちます。

(写真:発酵した稲わら、田中石灰工業株式会社ニテ)
納豆菌 正式名:枯草菌(こそうきん)

約二ヶ月間シートの下で発酵させた稲わら。
この発酵によってノリの代わりとなるリグニンが分泌されます。

酒蔵の見学に行くと「納豆を食べましたか?」と聞かれます。日本酒を造る際、最も大切な工程の一つである酒米発酵のため麹菌の増殖を発酵室で行いますが、この発酵室にごくわずかな納豆菌が侵入しますと、圧倒的な速さで納豆菌が増殖し麹菌の発酵を止めてしまいます。そのため、当然の事ながら酒蔵で働く方達は納豆菌の混入にはとても気を使われています。
更に納豆菌は過酷な環境に置かれると芽胞(がほう)と言うバリアを張り休眠状態となります。過酷な環境とは100℃の高温、ー100℃の冷間時、真空の空間、宇宙空間並みの放射線を浴びる環境にも耐えうる体制を自身で構築します。
更に人間が食べると、胃酸のような強い酸にも耐え、生きて腸までたどり着きます。そして腸内で再び活動を再開し善玉菌や乳酸菌(ビフィズス菌)を増やし腸内にとどまらず血液や様々な所で身体に良い影響を与えます。
また被爆土壌の改良で土壌中の生態系のバランスを整える為、一部で納豆菌が使われており、このあたりが最強の菌と言われるゆえんです。 
粗壁や土佐漆喰では、沢山の稲ワラを使います。地震や災害の為修理工事リフォーム等や建て替え工事等でも、土壁や漆喰を集めシート被せ発酵させるとリグニンが分泌され再び壁土として利用が可能です。(昔はそれが普通でした。)

(写真:消石灰の生成について)

田中石灰工業株式会社では石灰石を焼成する工程を江戸時代から続く伝統工法である[土佐塩焼き工法]で行います。

●土佐塩焼き工法
徳利状の釜に石灰石・無煙炭・塩の順番で何度も積み重三日~一週間焼き続ける事で、生石灰が生成されます。
その後消火(水和反応)の工程を経て、塩焼き消石灰が完成します。

(写真:田中石灰工業株式会社ニテ)

左側の写真は石灰石を焼成する土中竃(どちゅうかま)の写真で、土中竃の内部に見えているのが石灰石です。
竃の内部は徳利状になっており、手前に見える石に似た固形物が無煙炭です。
右側の写真は、塩を土中竃に投入する作業で、塩は不純物を取り除く役割を果たします。(塩自体はは無塩炭の灰と一緒に気化していきます。)このような状態で、三日~七日間かけて焼き続けます。

(写真:土中竃上部写真及び土中竃の構造)

(写真:焼成が完成した塩焼き石灰)

焼成が完成した塩焼き消石灰です。その後は、発酵した稲わらと混ぜ水練りし更に3ヶ月以上熟成させます。土佐漆喰は、製造から出荷まで長い期間と多数の工程を得て現場に届けられます。このように手間暇をかけて造られた、強アルカリ性の土佐漆喰は多孔質であるため常に呼吸し、ホルムアルデヒドやたばこ等有害な化学物質を吸収し分解し室内の空気を清浄に保ちます。また、湿気の調湿にも大変優れているため、梅雨から夏にかけてはジメジメする湿気を吸収するので、涼しくカビの予防にも大きく影響します。また冬に外気温の差で出来る結露も発生しにくくなります。

土佐漆喰と一般的な漆喰の違い

高知新聞 2021(令和3年)8月29日 コロナウイルス99.98%が不活化